Q: 地表には、様々な種類の粒子が宇宙から降り注いでいます。
これらの粒子は一秒間に何個くらい、この付箋紙を通りすぎるでしょうか?
A: (例)ミューオンの場合 ・・・ 2個程度
みなさんは普段の生活で素粒子の存在を感じることはありますか?実はこのページを読んでいる瞬間も宇宙からたくさんの粒子たちがあなたの体に降り注いでいます。
宇宙空間には無数の粒子(一次宇宙線)が飛び交っています。一次宇宙線と地球大気との反応によってできた粒子(二次宇宙線)が地表に降ってきます。この二次宇宙線は様々な粒子(陽子、中性子、電子...)を含みますが、その大部分をミューオンと呼ばれる素粒子が占めます。ここではこのミューオンに注目して、具体的にどれくらいの個数が空から降ってきているのか計算してみましょう。
図1に、地球に降り注ぐ宇宙線の種類と個数の関係を示します。この図から、地表付近では1秒、$1\ \text{m}^2$、1ステラジアンあたり約100個のミューオンがやってきていることが読み出せます。ステラジアンは3次元での角度を表す単位です。地表面を除くあらゆる角度から宇宙線がやってくると考えると、
$$100\ \text{m}^{-2}\text{s}^{-1}\text{sr}^{-1} \times \pi\ \text{sr} \approx 314\ \text{m}^{-2}\text{s}^{-1}$$
となります。つまり、1秒、$1\ \text{m}^2$あたり314個のミューオンが地表付近にやってきます。付箋紙のサイズを$8\ \text{cm} \times 8\ \text{cm} = 64\ \text{cm}^2$、つまり$0.0064\ \text{m}^2$とすると、
$$314\ \text{m}^{-2}\text{s}^{-1} \times 0.0064\ \text{m}^2 \approx 2\ \text{s}^{-1} $$
となります。つまり、1秒間に2個程度のミューオンが今も宇宙から付箋紙に降り注いでいることがわかります。
ここではミューオンについて計算しましたが、他の粒子に注目すると地表に降ってくる粒子の数は異なります。また、同じ粒子に注目している場合でも、生成されるメカニズムが異なるとそれによっても数が変わります。興味のある方はぜひ調べてみてくださいね。
この空から降ってくる粒子の存在に、人々はいつ・どうやって気が付いたのでしょうか。気になりませんか?宇宙線の歴史を簡単に見ていきましょう。20世紀はじめ、電離箱と呼ばれる放射線を観測する装置に対して、外部からの放射線をできる限り遮断しても電離箱が信号を出すことが知られていました。次第に、この現象はエネルギーの高い放射線が地表にやってくることが原因ではないかと考えられ始めました。そこで、オーストリアの物理学者 ヘスは電離箱を気球に乗せ、どこから放射線がやってくるかを調べました。なんと、高度が上がるにつれて観測される放射線量が増えていくことがわかったのです。このようにして宇宙線と呼ばれる放射線の一種が発見されたのです。
もう一つ、宇宙線に関するお話を紹介します。高エネルギーの宇宙線ミューオンは色々な物質を透過して地表にやってきます。この性質を使うことで直接調べることの難しいピラミッドや福島原子力発電所の内部構造が画像イメージとして得られるのです。もっと知りたい方は
名古屋大学基本粒子研究室
のwebページを訪ねてみてください。
そして、宇宙線はその後の素粒子物理学の発展に大きく貢献してきました。例えば、素粒子(リンク)を構成するミューオン、陽電子、素粒子の複合体であるπ中間子やK中間子などの初観測は宇宙線によるものなのです。
現在、宇宙線物理学の分野では、高エネルギー宇宙線起源の探索、暗黒物質の探索、宇宙ニュートリノの観測などを行うことにより、初期宇宙から素粒子物理学、はたまた天文学の未解決問題を解決しようという試みが行われています。最先端の宇宙線物理学の研究については 名古屋大学宇宙線研究部 をご覧ください。